関連痛ってなに?
トリガーポイントの特徴のひとつとして「関連痛」を引き起こすという現象があります。これは痛んでいる場所に原因となるしこりが見あたらず、痛む場所とは離れた所に原因となるしこりがあるという現象です。
この現象はすでに19世紀中頃には知られていて、1938年には Kellgren教授によって詳しい報告がされています。濃度6%の食塩水筋肉に注入すると、注入した場所から離れた所に痛みを引き起こしたという研究です。この痛みは神経の走行に沿って現れるわけではなかったので、神経痛ではなく、「関連痛」と呼ばれる事になりました。
また、この関連痛はそれぞれの筋に特有のパターンがあり、筋だけでなく、腱、靭帯、骨膜および皮膚の刺激によっても生じる事を報告しています。
さらにこの関連痛を発生させる過敏なスポットがあり、そのスポットに局所麻酔薬を注入することによって除痛できるとしています。
「筋膜痛と機能障害 トリガーポイント・マニュアル」で紹介されている関連痛の中で、もっとも遠くまで痛みを放散するのはヒラメ筋トリガーポイントで、何と同側の頬に痛みを感じさせます。
(イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用・改変)
「頬が痛む」からと言って頬の治療をしても痛みは軽減せず、ヒラメ筋のトリガーポイントを弛めると痛みが緩和するという事です。
従ってこの「関連痛」を前提とした痛み医療が行われなければ、痛みが緩和されずに長年苦しむという事になります。
症状の連鎖が始まる
「関連痛」が生じ始めますと、痛みを感じている領域の筋肉も影響を受け、トリガーポイントが形成されて行きます。二次的なトリガーポイントが生じ、またこのトリガーポイントが関連痛を起こし始めると、三次的なトリガーポイントが生じてきます。
このように痛みが痛みを呼ぶという連鎖が始まりますので、痛みの元を早期に治療する必要があります。しかし、関連痛の概念が無ければ、痛むところだけの治療となり、痛みを起こしている元へのアプローチがなされないため、痛みが拡がって行くことになります。
なぜ遠く離れた所に影響が出るのか?
なぜ神経の走行と関係のない離れた部位で痛みを感じるのか?という事については諸説がありますが、「筋膜の連鎖」という視点で考えますと納得できます。
私達は身体を維持したり動かしたりするときに、個々の筋の働きではなく「筋膜の繋がり」を使っています。
例えば投球をするような場合、下図のような筋膜の繋がりを使っています。
従って、動作痛や動作に制限があるような場合は、この「筋膜の繋がり」で原因を考えることがとても大切で、この繋がりを「筋膜ライン」と呼びます。
関連痛は筋膜の繋がりの中で起きている?!
下図は「深前線」と呼ばれる筋膜ラインで、私達の姿勢を維持したり、ある動きをする時に支持をする重要な働きをしています。
側頭部-咀嚼筋から始まり、身体の深部を通って脚の内転筋に繋がり、さらにそこから後ろ側に回って下腿を通り足底まで繋がっています。
つまり、「下腿と咀嚼筋は同じ筋膜ライン上にある」という事です。
(医学書院刊:アナトミートレインより引用)
このように、一見、何の関係もないように見える「関連痛」ですが、筋膜の繋がりとして見るとよく理解出来ます。
目次
- 1.日本の痛み医療は遅れている!?
- 1-1 現代医学は痛みの原因のとらえ方を間違えています。
- 1-2 今までの「痛み常識」を疑ってみる
- 1-3 画像診断は役に立たない
- 1-4 構造的アプローチから機能的アプローチへ