医学は進歩し、身体を酷使する事が減っているのに、腰痛が増え続けているのは、これまで見てきたように、本当の原因が解明されていないからなのです。
たしかに現代医学は目覚ましい進歩を遂げ、レントゲン撮影をはじめ、CTスキャン(コンピュータ断層撮影法)や MRI(核磁気共鳴画像診断法)といった画像診断技術が開発されています。
ところが、筋骨格系疾患の85%以上は、症状と画像診断から得られる所見が一致しないため、実ははっきりした診断を下すことができないというのが現状です。
【MRIでは腰痛が見えない】
【研究内容】
5つの異なる職種(自動車工場、救急隊員、事務職、病院清掃業、ビール工場)の149名を対象に、1年間にわたって腰部をMRIで繰り返し撮影し、画像所見と腰痛との関連を調査した。【結果】
椎間板異常と腰痛との関連性はなく、調査期間中に13名が腰痛を発症したもののMRI所見に変化はなかった。
(Savage RA et al,Eur Spine J,1997)
上記の研究のように、1年間に亘って腰部をMRIで繰り返し撮影しても、腰痛は見えないのです。
画像で痛み診断ができないのは当然のことだといえます。診断が出来ないのですから、治療がうまく進むわけがありません。
つまり従来の「痛みの原因は骨や関節の異常」という前提は成り立っていないのです。
北米脊椎学会会長のレイ・べーカー氏は次の様に述べています。
「腰痛の発症から6週間以内にMRI検査を行うのは、意味がないばかりか、手術件数と治療コストを増やすだけだ」と述べ、腰痛患者を対象としたX線やMRI検査を問題視している。 腰痛には無関係な異常を見つけるだけに終わることが多いためだ。
40歳以上の成人の8割には、腰の部分に膨らみなどの変形が見られる。医師は手術したくなるが、これは痛みの原因ではない。こうした「異常」がCTやMRIに現れても、腰痛と結び付けることにはほとんど意味がない。
大半の腰痛は筋肉の緊張などによるものだから、画像では原因は分からない。たとえ手術をしても、その効果は市販薬や連動や体を休めることとほとんど変わらず、手術は大きな危険を伴う。
目次
- 1.日本の痛み医療は遅れている!?
- 1-1 現代医学は痛みの原因のとらえ方を間違えています。
- 1-2 今までの「痛み常識」を疑ってみる
- 1-3 画像診断は役に立たない
- 1-4 構造的アプローチから機能的アプローチへ