トリガーポイントとは?腰痛・肩こり・関節痛などの痛みの原因です。

トリガーポイント研究所

4-4 手の痛み、しびれ

誤診されてきた手の痛みしびれ

手や指に痛みやしびれが生じた場合、「手根管症候群」「腱鞘炎」「頸椎ヘルニア」「胸郭出口症候群」など、症状によって様々な診断が下されます。

肩や首のコリに加えて、「腕がだるい」「手がしびれる」「力が入らない」と言った腕や手の症状が加わると、「胸郭出口症候群」という診断名が付くことがあります。鎖骨周囲のトラブルによって起きる症状の総称で、原因はいくつか挙げられます。 

胸郭出口症候群は、腕神経叢と鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が胸郭出口付近で頚肋、鎖骨、第一肋骨などや前斜角筋、中斜角筋、小胸筋などが圧迫・牽引されることで起きる症状の総称である。

Wikipedia:胸郭出口症候群

「痛み」という症状もつらいのですが、「だるい」という症状も本当に鬱陶しくてやっかいな症状ですし、手を使うお仕事をされている方は、「力が入らない」というのも困った症状です。

もう10年ほど前の事ですが、20代の若い女性が来院され、「胸郭出口症候群で手術まで受けたのですが、肩こりが治らず困っています」と訴えられました。「どんな手術を受けられたのですか?」とお尋ねしたら、「第1肋骨を除去しました。」との事でした。下記のように確かに治療法として「第1肋骨切除があります。 

この女性は、第1肋骨切除の手術を受けてもつらい肩こりは治らず、身体の全体のバランスを整え、呼吸や肩こりに関与する筋を調整すると、ご本人が驚かれるほどつらい肩こりが楽になられました。

症状を悪化させる動作を禁止し、消炎鎮痛薬を内服します。重症例では手術が必要で、原因により第1肋骨切除、頸肋切除、前斜角筋切除などを行います。

「goo ヘルスケア」:胸郭出口症候群 『治療の方法』

斜角筋の緊張が起こす腕や手の症状

斜角筋(下図右)は腕や手の症状では必ずチェックしなければならない筋で、この筋が緊張しますと「手のしびれ」「起床時の手のむくみ、こわばり」を起こします。斜角筋の緊張をテストするには下図のように第1関節と第2関節の所で指を曲げる方法があります。

緊張が無ければ(A)のように指が全部くっつきますが、斜角筋に緊張があると(C)のように指がつかなくなります。ちなみに(B)は指を伸ばす「伸筋」に緊張がある場合です。B図では示指の伸筋に緊張があります。

 【イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用 】

斜角筋は腕を挙げると弛みますので、前腕をおでこに付けるように挙げて、2~3分で痺れ感や違和感が軽減もしくは消失する場合は、斜角筋の緊張による症状だと分かります。

小胸筋の緊張が起こす腕や手の症状

小胸筋の下を腕や手に行く血管や神経が通っていますので、小胸筋が緊張しますと腕や手に「痺れ感」や「怠い」などの症状が起き始めます。斜角筋と似た症状が起きるのですが、斜角筋の場合は「むくみ」や「こわばり感」が出ますが、小胸筋の場合はありません。

斜角筋の場合は腕を挙げると症状が緩和しますが、小胸筋の緊張による症状の場合は、腕を挙げると脈が取れなくなったり、手が蒼白になるなど、症状が悪化します。

下図のように肩の前方で痛みを感じる事が多く、肘を挙げるような動作をすると強い痛みを感じますので、五十肩と診断されることもよくあります。

小胸筋はストレッチに反応し難い筋ですので、PIR(ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション)がとても効果的です。

セルフエクササイズは次のように行います。(下図参照)

  1. 仰臥位で肩がベッドの端に来るように寝ます。
  2. 腕を伸ばしベッドの下へ下ろします。
  3. まず肩を軽く持ち上げ、さらに腕を2cm持ち上げます。
  4. そのまま5秒~10秒間保ちます。
  5. 最後に息を吸って止め、ゆっくりと吐きながら肩と腕の力を抜きます。
  6. これを数回繰り返します。

【イラスト出典:徒手医学のリハビリテーションより引用】

手根管症候群との関連

斜角筋や小胸筋の関連痛領域を見ていただくと、胸郭出口症候群が「手根管症候群」との関連が深いことをご理解いただけると思います。斜角筋や小胸筋のトリガーポイント、そして斜角筋の影響を受けてブロックされた第1肋骨は、いわゆる手根管症候群と言われる症状を起こす重要な関節です。

直接的に関与していますのは、回内筋、肩甲下筋、上腕筋、骨間筋などです。これらの筋のトリガーポイントを弛め、ブロックしている関節を解放すると「手がしびれる」「痛む」と言った症状が改善します。

【肩甲下筋】

【骨間筋】

イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用

コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)


整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。