すべての痛みや障害は、全身性の連鎖の中で起きていますが、これまでこの視点が無く、局所の治療に終始してきたため、なかなか治りにくかったり、慢性化したりという事が起きています。 特に、顎関節症や開口障害はその傾向が強く、顎周囲の筋へのアプローチが主になっているように思います。
顎関節症や開口障害も全身の筋のアンバランスが背景にありますので、筋のバランスを整えますと、口の開きはすぐに改善します。下記の囲み記事にありますように、顎関節症や開口障害のある方はそれに先行する、首や肩の凝りがあります。僧帽筋、胸鎖乳突筋、斜角筋、肩甲挙筋は要チェックです。これらの筋のトラブルを解消した後に、直接的に関与している、咬筋、翼突筋、顎二腹筋などのトリガーポイントを弛めますと、症状がかなり軽減します。
【顎関節症の症状 】 一般に、顎運動障害、顎関節痛や関節雑音が単独もしくは複数合併して発現する(これを顎関節症の主要3症状と呼ぶ)。疼痛は主に顎運動時に生じる。雑音には、ゴリゴリという低い音のcrepitusと、カクンという弾撥音であるclickingとがある。その他にも、耳の痛み、耳閉感、難聴、めまい、眼精疲労といった眼や耳の症状、頭痛や首、肩のこり等の症状を呈する場合もある。 (フリー百科事典 Wikipediaより)
【治療手順】 全身の筋のバランス調整⇒頭頸部の関節を弛める⇒首・肩のトリガーポイントを弛める⇒咀嚼関係の筋を弛める
【咬筋の関連痛領域】 【僧帽筋の関連痛領域】
イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用
線維筋痛症と顎関節症
線維筋痛症と呼ばれる全身性の痛みを持つ患者さんの多くに、口腔顔面痛や開口障害が見られるという研究があります。(Hedenberg-Magnusson B,et al)
線維筋痛症患者さん191名中
- 口腔顔面痛:140名(73%)
- 開口障害 : 96名(50%)
咀嚼筋が脳神経と直結していることから、咀嚼筋に生じた侵害刺激を中枢が受け続ける事で、中枢に障害が生じ、それが全身性の症状へと広がって行っている可能性が指摘されています。
従って、口腔顔面痛や開口障害が生じた場合は、早期に改善させる必要があると考えています。
目次
- 1.日本の痛み医療は遅れている!?
- 1-1 現代医学は痛みの原因のとらえ方を間違えています。
- 1-2 今までの「痛み常識」を疑ってみる
- 1-3 画像診断は役に立たない
- 1-4 構造的アプローチから機能的アプローチへ