トリガーポイントとは?腰痛・肩こり・関節痛などの痛みの原因です。

トリガーポイント研究所

診断法

施術家にとって最も重要なことは「診断力をつける」ということだと思っています。
どんなにすばらしい技術を持っていても、的確な診断ができなければ無用の長物になってしまいます。
的確な診断を行うには「理論」「経験」「感性」が必要だと考えています。
「経験」と「感性」は臨床体験を積むことで生まれてきますが、「理論」を身につけることで、「経験」と「感性」をカバー出来ます。

1)問診

「診断的問診」と「治療的問診」

問診には「診断的問診」と「治療的問診」があります。
「診断的問診」は診断に必要な情報を仕入れるもので、「治療的問診」は問診そのものが治療となるような関わりをする事です。
「治療的問診」の基本は「尊敬、傾聴、理解」です。

私達が自分自身の価値感を尊重して欲しいと思うように、患者さんも同様に考えています。
患者さんの価値感や信念を認め尊敬し、話を傾聴することによって信頼関係が醸成されます。
そのことによって、患者さんの気持ちが解放され生理的にも改善に向かいます。

治癒力阻害因子のチェック

※治癒力阻害因子についてはこちらをご覧下さい⇒

①食生活の状況:栄養素の過不足

②幼少時からの病歴・障害歴

③家族の病歴・家族構成

2)視診

構造的欠陥のチェック

遺伝や後天的要素により、人によって体型が異なりますが、次の構造的欠陥のある方は痛みが慢性化しやすく、再発しやすいとされています。
特に次の三つは治り難い方に多くみられます。

  • 半側小骨盤
  • 短い上腕
  • モートン足構造

①半側小骨盤

「半側小骨盤」はどちらかの骨盤の大きさが異なるという現象で、約30%の人に見られるとされています。
下のイラスト(左)のように、骨盤の大きさに差があると、身体が斜めに傾きます。
その為視線も傾きますので、腰背部の筋を使って身体を立て直す代償が生じ、左の骨盤が小さい場合は左側の腰背部の筋が、右の骨盤が小さいと右側の腰背部の筋が緊張します。

そこで、下のイラスト(右)のように1~1.5cmの本を挟むと、身体の傾きも整い、腰背部の筋も弛緩します。
その為、半側小骨盤が見られる場合は、事務仕事、長時間のドライブや映画鑑賞などの時に、タオルを折り畳んで敷いておくと身体が楽になることをお伝えします。

これを実践する事によって、患者さんの治り難い状態に変化が生じ、全人的な健康度がアップします。

(イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用・改変)                     

②短い上腕

「短い上腕」は立位で腕を垂らした状態から肘を曲げた時に、肘が腸骨陵に届かないことを言います。
このタイプの方は意外に多く、首や肩が凝りやすいため、施術に訪れる方々の中での割合は高い印象があります。

上腕が短いため、肘掛け椅子では肘が届かず、パソコンの入力作業などでは前腕が浮いた状態となるため、腕の重みを肩や背部などの筋で支えることになります。そのため常に首や肩が凝りやすくなります。

このような方には、肘掛けの上にクッションを置く、パソコン作業ではテーブルの高さを上げるなどの工夫をされることをアドバイスされて下さい。

③モートン足構造

「モートン足構造」は足の第二中足骨が長めの事をいい、見かけ上、足の第二趾が長く見えます。
ギリシャ彫刻の人物像の第二趾が長い為「ギリシャ足」とも呼ばれます。

第二中足骨が長い為、母趾の付け根より先に第二趾の付け根が先に着地することになり、足底が不安定となります。
これを代償するために、足首や膝に過度な負担がかかる事になります。

3)動診(動作分析)


痛みで困っておられる方の多くは動作痛です。腕を動かすと痛む、前屈みになると腰が痛むなどです。
そこで、動作痛の診断が的確にできるようになりますと、患者さんの主訴の解決に大きく役立ちます。

動作分析の基本原理

健常な筋は、動作をする際に筋が収縮しても痛みを発する事はありませんが、筋・筋膜がトラブルを起こしますと、収縮信号に反応して痙攣します。これが「動作痛」です。

では、どこが痙攣を起こしているのか?という事を診断する為に動作分析を行います。
動作分析をする際に役立つのは次の三つの視点です。

  • 短縮痛理論
  • 関連痛理論=筋膜ライン理論
  • 屈筋優位理論

①短縮痛理論

筋の収縮の様態として次の三つがあります。

「伸張性収縮」(筋が伸びながら力が入っている状態)
「短縮性収縮」(筋が短くなりながら力が入っている状態)
「等尺性収縮」(筋の長さに変化はないが、力が入っている状態)

動作痛が起きている時に、どの筋が痙攣を起こしているのかをチェックする事になります。

さて、筋を収縮させず、第三者が筋を短縮させても痙攣が生じる事があり、これを「短縮痛」と言います。
この事から、動作痛の原因部位を見つける場合は次の2点が有力候補となります。
・どこに力が入っているのか?(収縮部位)
・どこが短くなっているのか?(短縮部位)
そして、この二つが同時に起きている部位がありましたら、最有力候補となります。

力の入れ方は人によって若干異なりますし、トラブルを起こしている場合は「代償」のために通常と違った力の入れ方をする事が多々みられますので、手のひらで触れてどこに力が入るのかを観察すると分かりやすいです。

(例)

座位:左前にお辞儀すると右腰が痛む

⇒左前にお辞儀する時に短縮するのは左腹部の筋です。
⇒左腹部を押圧したまま再度左前にお辞儀して頂く⇒痛みが減少・消失する事を確認します。
⇒左腹部へのアプローチで改善する。

②関連痛=筋膜ライン理論

「関連痛=筋膜ライン理論」については、「関連痛ってなに?」というページで詳しく説明していますので、そちらもご覧下さい。

「関連痛」を一言でいいますと、「痛みを感じている所に原因があるわけではない」ということです。
従って、痛みを感じている所への施術では効果が出ない事もあるという事になります。

そこで、動作痛の原因部位を診断するときは、痛む場所に着目するのではなく、「どこに原因があって痛みを感じているのか?」という視点で推測します。

その際に役立つのが「筋膜ライン理論」で、マイヤーズのアナトミートレインなどがその代表です。
漢方の経絡理論も近い考え方です。

例えば五十肩の症状で腕を挙げると肩に痛みが出るような場合、腕を挙げる時に使う筋膜ライン上のポイントを押すと、痛みが軽減したり消失したりします。

つまり、痛みは肩で感じていますが、原因は別の所にあるということを示しています。そしてその原因部位を見つけるときに筋膜ライン上を探すと見つけやすいということです。

③屈筋優位原理

伸筋屈筋

体を動かす筋の役割として「伸ばす為の筋肉=伸筋」と「曲げる為の筋肉=屈筋」がありますが、痛みや熱さを感じたときに、それらから逃げる為の逃避反射は「屈筋」が使われます。

つまり何らかの刺激を感じたときには「屈筋」が優先的に使われると言う事になります。
そこで、動作痛を診断する際に屈筋側と伸筋側どちらも候補となった場合は屈筋側からチェックすると効率的です。

また臨床的には、原因は「屈筋」にあるのに痛みは伸筋側で感じるという事によく出会います。

(例)

腰が痛い(伸筋側)⇒原因は腹部(屈筋側)

膝頭が痛い(伸筋側)⇒原因はハムストリング(屈筋側)

肘が痛い(伸筋側)⇒原因は上腕二頭筋(屈筋側)

このように、痛みを感じている所が伸筋側であった場合屈筋側のチェックと施術は欠かせません。

コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)


整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。