トリガーポイント研究所に6月末に相談に来られた、Fさん(48歳)は、ひどい腰痛の為に休職中(職業は看護師)で、これまでに30カ所でさまざまな治療を受けたとの事でした。
初めて来られた日は、家の中でも杖にしがみついていないと歩けない状態で、50mほど歩くのに10回以上立ち止まなければならないというほどでした。医療機関では「腰椎椎間板ヘルニア」という診断で、「僅かに出ているけど、こんなにひどい症状を起こすとは思えない」という評価だったそうです。インターネットで加茂先生のサイトや当研究所のサイトを読み、ご自分の痛みもトリガーポイントが起こしているに違いないと直感されたそうです。これまでの治療経過を書き留めておられましたので、痛みで困っている方の参考になれば・・・ということで、公開させて頂く事になりました。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の視点がない治療では、なかなか治療効果が上がりにくいこと、「安静にしなさい」「筋肉を強化しなさい」など、痛みを悪化させるような指示が未だになされている点に注目して下さい。
(参考)「今までの痛み常識を疑ってみる」https://trigger110.net/medical/common-sense
【腰痛体験記①】
元々、腰痛持ちで、ぎっくり腰も二年に一回は起こし、鍼治療で2、3日休めば治っていた。
日頃から整骨院、整体、鍼などで何とか凌いできたが…。
平成20年10月中旬頃にまたぎっくり腰を起こした。職場で検尿コップを両手に持ち、立ち上がった時にやってしまった。
平成20年10月
まず行きつけの鍼治療を受ける。
H治療院
・鍼、マッサージ
・安静にしてたらすぐ治ると。
・続けて行ったが、いつもの様に痛みは取れず効果はなかった。
☆ワンポイント解説
安静臥床は回復を遅らせ、再発しやすいという研究があります。
・18件の体系的レビューでは、安静臥床には効果がないどころか回復が遅れることが判明した一方、耐えられる範囲内で日常生活を続けると、職場復帰がより早くなるだけでなく、慢性化を防ぐことができ、再発率をも低下させられる。 (Waddell G et al,Br J Gen Pract,1997)
・39件の体系的レビューでは、安静臥床によって何らかの改善が認められた研究はひとつもない。 (Allen C et al,Lancet,1999)
平成20年11月
I 整骨院
・電気、ホットパック、テーピング、施術
・酷いようだが必ず治ります、1週間は来てくださいと言われた。
・行く度に痛みが強くなっていった。歩くと軋むような痛さになった。恐くなって4回で止めた。
N 整骨院
・電気、ローラー、ホットパック、施術
・腹筋、背筋が弱い。軽いストレッチをするように。歩けば自然と腰痛も治る
・とても歩ける状態では無くストレッチを行ったが身体がほぐれるようでは無かった
骨盤体操 1ヶ月
・骨盤ストレッチを行う。
・骨盤がずれて腰痛が起きていると言われた。
・効果はなし
平成21年1月
【この頃の症状】
歩く・立つで痛み出る
立ち姿勢前屈みで真っ直ぐが続かない
左股関節痛む
腰がバシバシ強張る脊柱がギシギシする背中が張ったように痛い
首が痛い特に右耳下から強張ったように痛い
肩と上腕が重だるい
左肩胛骨下が吊ってる
右脇腹と上の方が縫い付けられたみたい
歩くと右に傾く
腰に蒲鉾板を咬ませたような詰まった感じ
ベニヤ板を背中に張られてるような
足がとても疲れる
夕方かなり浮腫む
帰宅して休まないとと何にもできない
風呂上がりはひどく疲れる
A整形外科
・電気、ホットパック、施術、フィットネス
・レントゲンは異常無し。腰痛症でぎっくり腰が長引いている。腹筋、背筋を鍛えよう。湿布と痛み止め処方あり
・1月2月と通うが効果は感じなかった。フィットネスをすると疲労感が強かった
平成21年2月
S鍼灸整骨院
・電気、皮内鍼
・完治はないから生活習慣を見直して上手に付き合うよう
・皮内鍼で少し楽になったような気がした。10回ほどで、先生の方から治療はしたから後は歩いたり運動したりして治して行くようにと言われたが歩くと変な歩き方ですごく疲れ、背中や頚が凝ったりした。
平成21年3月
A整体院
・整体
・背骨が歪んだ状態になっている。腰痛は姿勢が悪いから起きる。気をつけるようにと毎回言われた。
・姿勢を正そうと心掛けるが前に引っ張られすぐ前屈みとなる。歩くと、手足の動きがバラバラみたいな感じになってる気がした。それを伝えると歩き方を教えてくれるが出来なかった。施術後、玄関から出ると元に戻っていた。保健の効かない治療はお金がかかるが、そんな事を言ってられないくらいきつかった。言われた通りに週2回通ったが、眠っている時も背中が吊ったり、重しが乗ったような感覚で何度も目が覚めていた。睡眠薬を飲むようになっても何度も目が覚めた。
☆ワンポイント解説
トリガーポイントが活性化すると、トリガーポイントを含む筋の緊張が高まり、その筋が短縮すると痛みを発しやすくなるため、その筋を伸ばそうとする、いわゆる「疼痛緩和姿勢」をとるようになります。つまり、姿勢が悪いから痛みが出ているのではなく、痛みが出るから痛まない姿勢をとっているのです。そのため無理に姿勢を正そうとすると、よけいに痛みが強くなります。
平成21年4月
I 鍼灸院
・鍼
・腰痛はすぐ治ります
・10回通うが効果無し
平成21年6月
A鍼灸院
・鍼、吸い玉
・状態説明に「ふ~ん、何でかね」と関心が無い
・治療後来た時と変化無し
・治療中、スタッフと私語が多く笑い出して手を止めたりで信頼できず1回で止めた。上手で有名と言われているが…。
K病院
・レントゲン、MRI、エコー
・異常無し、原因不明と。
年金病院産婦人科紹介される。
平成21年7月
N病院
・エコー
・異常無し
・原因がわからず自分でも不思議に思った。随分長引いていて、治らなかったらと考えると不安や苛立ちが湧いてきたが、きっと何か治療方があるはずと気を取り直したりの繰り返しだった。
TYクリニック
・漢方薬二種類
・年齢によるもの
・足の冷えには効いたが、痛みには効かず
平成21年8月
THクリニック
・漢方薬調合
・身体に水分が無くなってきてるからあちこち痛みが出ている
・効果無し
・何をしてもまったく効かず、どうして良いか途方に暮れた。焦燥感と絶望感で気持ちが鬱いだ。パソコンを持たず、誰か良い治療所が無いかとあちらこちらに電話をかけまくったが、まったく情報は無かった。
お祓い二回
・知り合いに話をしたら祈祷を勧められ、信じ難かったが相談に行った。自宅にたくさん霊がいると言われてやはり信じ難かったが、気味悪いので家もお祓いしてもらった。その日の晩に日頃の痛みに頭痛が加わったので電話すると『また憑いてる』と言われたのできりが無いので結構だと断った。
Sヨガ
・ヨガストレッチ
・身体が前屈みになっているのでポーズがきつくてすぐ崩れた。
2ヶ月通って止めた。
☆ワンポイント解説
痛みがある時に、ストレッチングしたり、ポーズが取れるようになれば良くなるというものではありません。トリガーポイントが生じている筋は短縮し、過敏性が生じていることが多いので、場合によっては痛みが強くなることもあります。 筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の視点に基づいたエクササイズが必要です。
コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)
整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。