筋筋膜性疼痛症候群の理論を構築されたトラベル博士等は、その著書「トリガーポイントマニュアル」に次のような事を述べられています。
「患者は通常もっとも最近活性化したトリガーポイントによる訴えを示す。もし一番古いトリガーポイントが不活性化されると、患者はそれ以上の治療を受けずに回復する。」
つまり、最近出現した痛みは、それよりもずっと以前に生じたトリガーポイントが惹き起こしているので、その大元のトリガーポイントを改善しなければ、治療と再発をずっと繰り返すという事になります。
これを「親ガメこけたら皆こけた理論」と私は呼んでいます。
最近来られた患者さんの症例をご紹介致します。
60代男性
(主訴)
①首を右に向けると右首~右背中にかけて痛みが出る。
②右肩を動かすと痛みが出る。
③物を噛もうとすると痛みが出て噛めない。
(痛みが出るようになったきっかけ)
このような痛みが出るきっかけとなる事には思い当たることはないが、2週間ほど前に脚を酷使する作業をした。
(障害歴)
10代の頃に投手をしていて、右側に飛んで来たライナーを取ろうとして体を捻ったときに腰に激痛が走り動けなくなった。
その後ずっと腰痛に悩まされてきた。
(診断)
三つの主訴の中で原因を推定しやすい愁訴は③の「物を噛もうとすると痛みが出る」です。
・物を噛もうとすると痛みが出る。
・2週間ほど前に脚を酷使した。
・10代の頃にピッチャーライナーを取ろうとして体を捻った。
この三つの事から下腿に根源的なトラブルがあるのではないかと推測できます。
先ず下腿のトリガーポイントは顔面に痛みを放散し、顎関節症のような症状を起こし物を噛むときに痛みが生じるようになることがあります。
次に右側に飛んで来たピッチャーライナーを取ろうとすると、投球動作の軸足となっている左足に大きな負荷がかかり、機能障害が発生したと考えられます。
その為にこの方が10代の頃からずっと腰痛で困ってこられたのでしょう。
2週間ほど前に脚を酷使したため、下腿の機能障害が活性化し、肩や背中、そして顔面の筋に影響を与えたと考えられます。
(確認)
座位で首や肩を動かして頂くと痛みが出ますが、左下腿を押圧したまま動かして頂くと痛みは消失します。
この方の場合、左腓骨筋に圧痛があり、腓骨の動きが悪くなっていましたので、これらへのアプローチを行う事で、三つの主訴は快癒しました。
コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)
整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。