2)腰痛の常識を疑う
「腰痛の時は安静にしなければ・・・」など
私たちがよく耳にする腰痛の常識は本当なのでしょうか?
腰痛常識の代表的なものを検証する事で
腰痛治療の正しい在り方が見えてきます。
今回のシンポジウムでは次の5つの項目を検証しました。
①腰痛は加齢と共に増える(歳のせい)
②腰痛の時は安静が一番
③椎間板ヘルニアが腰痛の原因である
④椎間板などで神経が圧迫されて痛みが出る
⑤腰痛の改善には手術が最も効果がある
このグラフの横軸は年齢を表しています。
グリーンの棒グラフ⇒椎間狭小(椎骨と椎骨の間が狭くなるという構造的な変化)
オレンジの棒グラフ⇒骨棘形成(骨にトゲのような組織が出来てくる構造的な変化)
赤色の折れ線グラフ⇒腰痛の初発年齢(何歳の時に初めて腰痛をおこしたか)
青色の折れ線グラフ⇒腰痛の保有率(現在腰痛を感じているか)
棒グラフの構造的な変化は、年齢層が上がるに従って、
ほぼ右肩上がりに上昇しています。
しかし、腰痛の初発年齢や保有率は年齢と共に上がっているわけではなく
30代、40代あたりにピークがあり、
50代以降は減る傾向にあることが分かります。
つまり、構造的な変化と腰痛の関連性はイコールではないと言うことです。
腰痛に限らず、まず指導されるのは「安静が一番!」ではないでしょうか?
しかし、多くの研究で指示されているのは
「出来る範囲で普段通りの生活を続ける」という事です。
痛みの為に会社も休み、家事もお休みして
家でじ~っとしていますと
どうしても痛みの方に意識が行きますし
活動範囲が狭くなりますので、身体が硬くなります。
体液の循環が悪くなり、老廃物が蓄積しますし
細胞は低酸素、低栄養状態になります。
これらはいずれも発痛物質を作り出しますので
痛みの悪循環が始まります。
これは腰痛がない無症状の方を対象とした研究です。
痛みが無いのにも関わらず、
椎間板ヘルニアは76%にみられ、
椎間変性は85%にみられます。
従って、腰痛で受診した場合はかなりの確率で
腰椎の異常が見つかるということです。
また、椎間板の変性は3歳からみられると言う研究や
痛みがない10歳の児童を対象とした研究で
約10%に腰椎の変性がみられます。
ですから、腰椎の異常を直接的に痛みの原因と結びつける事は
慎重でなければならないと言うことです。
椎間板ヘルニアが痛みを起こしている理由として
「神経の圧迫」と説明をされていますが
生理学では通常、神経の圧迫では痛みを起こすことはないとされています。
⑤腰痛の改善には手術が最も効果がある
腰痛を治すには、最終的には手術しかない!と思っている方は多いのではないでしょうか?
初めて椎間板ヘルニアの手術が行われたのは
1932年(昭和7年)だそうです。
その当時は神経興奮のメカニズムの解明が進んでいなかった事もあり
この手術法は世界中に広まって行きました。
ところが、ヘルニアが残っていても痛みが無くなってしまう人や
ヘルニアが消滅したにも関わらず、痛みが無くならない人も多く存在することから
ヘルニアと痛みの関連性は非常に疑わしいものとなっています。
その為上記のスライドのように、
以前は手術を熱烈に支持していたマイアミ大学は
手術を行わなくなってしまっています。
コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)
整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。