トリガーポイント研究所では、歯科医師、歯科衛生士、技工士の方を対象とした、トリガーポイント・デンタルセラピスト養成講座を開催しています。これは、歯科領域で、通常の検査では異常が見つからないのに、さまざまな訴えをする患者さんがおられ、歯科医師の方もその対処に困っておられるからです。
その為、このような原因が分からない痛みや不定愁訴は「歯科心身症」として取り扱われ、抗うつ剤や抗不安薬などの投与がなされています。
これは、腰痛などの整形外科領域の痛みも、構造的な原因が分からなければ「心因性」だとか「心身症」とされてしまっている事と同じです。
東京医科歯科大学の豊福先生のサイトには、歯科領域で次のような症状が心身症として紹介されています。
【歯科心身症】
「舌がずっとピリピリする。舌がしびれる。」
「かみ合わせがいつまでも合わない(矯正・義歯など)」
「口の中が何とも言えず気持ち悪い」
「顔が痛いのに原因がわからない」
「歯の治療をしても痛みがとれない」
「あごが痛い」このような症状で大変困りながらも、歯科、耳鼻咽喉科、口腔外科、内科などの病院に行っても 「特に異常ありません」 「気のせいじゃないですか」などと言われ、それ以上のフォローのないことがしばしばあります。あるいは歯科で「不定愁訴」と言われ、精神科や心療内科を紹介されたものの「口のことはよく分からない」と担当の先生がお困りになるケースもしばしばあるようです。
・舌痛症 :45%
・口腔の異常感 :19%
・非定型顔面痛、歯痛 :11%
・かみ合わせの異常感 :7%
・口腔内セネストパチー :6%
・顎関節症(歯科心身症) :6%(通常の治療では改善しなかった顎関節症
・口腔乾燥感 :3%
・歯科治療恐怖症 :2%
・その他 :16%
ところがこれらの症状の多くは、筋筋膜性疼痛症候群が起こす症状と重なっているものがあります。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の概念はかなり以前から歯科領域でも研究されて来ています。その点について「トリガーポイント・マニュアル」には次のような事が書かれています。(要約文)
歯科業界が一般的な頭蓋下顎痛症候群の筋肉部分に対する意識を開拓した。これらの症候群はしばしば顎関節(TMJ)の機能障害の証拠を伴っている。
その結果、筋膜痛-機能障害(MPD)及び、TMJ痛-機能障害における骨格筋の役割に関する、多量の歯科文献がある。
過去の文献を整理要約し、筋膜トリガーポイントの概念と関連づける3つの主要な見解がある。
①MPD症候群は大部分筋肉から発生する。
②それは複雑な精神生理学的現象である。
③それは主として咬合メカニズムの乱れによる。
このように一般的な頭蓋下顎痛症候群には筋肉のトラブルの影響が大きいという認識が歯科領域でもあるようです。
トリガーポイント研究所でも、「歯科心身症」とされている疾患でも、トリガーポイントを見つけ、弛めるとこれらの症状が緩和、消失するケースがあることを確認しています。トリガーポイントが起こすさまざまな症状の事を、現代医学は取り入れないまま構築されていますので、筋筋膜性疼痛症候群の視点があれば、短期間で改善していた症状が、治らないまま長年苦しんだり、その痛みや症状の為に心理的変化も起こし、重症になっているケースが非常に多いと推測されます。
コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)
整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。