痛みで困っている方がまず受診するのはやはり医療機関でしょう。MRIやX線で検査し、異常がなければ「とりあえず、痛み止めと湿布で・・・」という治療になりますが、それで痛みが改善しなかった場合、家族や知人の勧めで、鍼灸院、整骨院、カイロプラクティックなどの代替医療を受診することになります。
それでも改善しなかった場合や、症状が深刻な状態になってきますと、ネットでいろんな情報を探し始めます。トリガーポイント研究所のサイトを訪れて頂いた方の多くはそのような経験をされていると思います。そして、ネットで見つけた様々な治療法や治療院の何が自分の症状を改善してくれるのかと、膨大な情報を前にして、途方に暮れる人も多いでしょう。
トリガーポイント研究所のセミナーで毎回お話しするのは、「真実だが全てではない」という事です。世の中には数え切れないほどの治療法がありますが、それぞれの治療法で改善する人もいますが、そうではない人もいます。それはなぜかと言いますと、痛みが生じた原因に応じた治療が為されたか、為されなかったのかという違いによります。
どんな痛みも不快でつらいものですが、その原因はさまざまで、追突事故や転倒などによるケガや筋の損傷の事もあり、内臓疾患が主原因のこともあり、また、リンパ液の停滞によって老廃物が蓄積された為に起きることもあり、関節の動きが減少する「関節ブロック」が生じても起きてきます。
従って、痛みを改善するには、筋やトリガーポイントへのアプローチだけではうまく行かない事もあり、内臓機能の活性化をしたり、関節のブロックを解除したり、リンパ液の停滞をもたらしている要因を解放したりと、痛みが生じた原因の応じた治療法の選択が必要です。
世の中のさまざまな治療法は、それぞれ真実ではあるのですが、すべてではないということなのです。そして、痛む所だけに眼を向けるのではなく、身体を総合的に診て、その方に応じた治療法を選択できる総合的な視点が必要なのです。
ノーベル生理学・医学賞を受賞した、アレキシス・カーレル博士の著書「人間 この未知なるもの (知的生きかた文庫)」から、一節をご紹介します。
【分析から総合へ】
(前略)医者の極端な専門化によって、さらに一層の弊害が起きている。医学は病人を小さい部分に分割し、各部門ごとに専門化がいる。ある専門家がその経歴の初めから、人体にあるごく小さい一部分だけに研究を限っている場合、他の部分の知識はきわめて初歩的なものであるから、まさに自分が専門とする分野でさえ、完全には理解できないのである。(中略)
しかし、現代文明は絶対的に専門家を必要としている。彼らなしには科学は進歩しないだろう。研究の結果を人間に適用する前に、分析によって得たバラバラのデータをわかりやすく総合的にまとめなければならない。(中略)
今日科学の仕事に携わっている人は多いが、真の科学者はほとんどいないのである。この奇妙な状態は、高い知的業績をあげられる人が少ないから生じたのではない。総合するのには、発見と同じように、並外れた知力と生理的耐久力が必要である。広くて強靱な精神は、正確で狭い精神よりはるかに稀なのだ。立派な科学者、立派な物理学者、立派な生理学者、立派な心理学者、立派な社会学者になるのはやさしい。それに反して、いくつかの異なった分野の科学知識を身につけ、それを使いこなせる人はほとんどいない。
分析は総合してはじめて大きな力を持つのである。
コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)
整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。