多くの動物が弱い部分、敏感な部分を地面に向け、敵から攻撃を受けた場合に、すぐに守れるような体勢を取っていますが、ヒトという動物はその部分を前面にさらけ出しています。
その為、突然大きな音がしてビックリしたような場合、ヒトはその弱い部分を守ろうとする本能が働き、身体の前面や屈筋と呼ばれる身体を縮めるための筋肉を緊張させ屈曲させます。車を運転中に突然後ろから追突されたりした場合は特に強烈な緊張信号が身体を走ります。また仕事や家庭での人間関係のトラブルで、怒りや不安の感情が続いているような場合、痛みなどが続いているような場合も、強い信号ではありませんが持続的に屈筋群を緊張させます。また、意識上には登っていないような内臓機能の低下や、筋の異常なども同様に屈筋群に緊張が生まれます。
フェルデンクライス・メソッドの創始者フェルデンクライスは「負の情動はすべて屈曲となって現れる」と述べています。
身体の前面の緊張と短縮は猫背姿勢へと導き、頭部が前下方に引っ張られますので、その姿勢を支えるために背部の筋に二次的な緊張が生まれます。また、身体の前面の緊張と短縮は胸郭の広がりを制限しますので、呼吸が浅くなり、細胞の活力に影響を与えます。つまり、刺激やストレスなどで生じた身体の前面の緊張が次々と連鎖して行くのです。
背中や腰が凝ったり痛みが生じますと、どうしてもその部位を押したりマッサージしたくなりますが、上述のように身体の前面の腹部や胸部の筋が緊張したことで、それを代償しようとして生じたものであることが多いのです。従ってまず、身体の前面の緊張を弛めないと、腰背部の筋は弛むことができません。背中や腰に異常を感じた場合は、まず腹部や胸部を弛める事が大切です。
コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)
整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。