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「はんかくさい」

このところ「滅びゆく日本の方言」にはまって、今日もその中からアホとバカを取り上げる。

東京で「ばか」を意味する言葉が、関西では「あほ」であると言う事実はよく知られている。もっとも東京でも関西でも「ばか」「あほ」の両方使うが、東京では「あほ」と言われる方が「ばか」より侮辱感が強く、関西では逆に「ばか」の方がきつい表現であり、「あほ」は会話でよく使われる軽い表現と言われている。

テレビ朝日(大阪)に、視聴者の依頼に応えて様々な調査を行う「探偵ナイトスクープ」と言う番組がある。この番組に、ある視聴者から「あほ」と「ばか」の境界はどこにあるか調べて欲しいと言う依頼が来た。そこでテレビ朝日では全国の教育委員会に手紙を出し、各地の「あほ・ばか」の表現を調査した。

結果は意外なものであった。近畿を中心にアホが分布している事は予想通りであったが、その両側にバカが分布していたのである。つまりバカ・アホ・バカと言うABA分布(周圏分布)であることが判明し、「方言周圏論」を適用すれば、バカはアホよりも古い表現であることが分かったのである。

この調査が明らかにした事はそれだけではない。アホとバカのほかに全国には非常に多くの「あほ・ばか」を意味する方言が存在し、しかも、その多くは周圏分布をしていたのである。この調査結果をもとに方言地図が作成され「あほ・ばか」方言は「かたつむり」をはるかに超える多重周圏分布を形成していることが判明した。(この調査結果は1992年に放送され番組は全国民放大賞を受賞した)。

テレビ朝日が作成した「全国アホ・バカ分布図」によれば、バカの主な領域は中部・関東以東と島根・広島以西であり、その他の様々な方言と共存している。ただし奄美・沖縄地方はフリムン類(後述)であり、アホもバカも使われていない。分布の上で最も古いと推定されるのは、ホンジナシ類(ホデナス・ホネガーなどを含む)であり、主に東北地方と九州南部に分布している。「ほんじ(本地)」とは「物の本来の姿、本性、正気」という意味であり、室町末期の「酒呑童子」には「酔ひても本地忘れず」と言う用例がある。

次に古いとされるのはホーケ類 (ホロケ、フーケモンなどを含む)で、山形と佐賀・長崎付近に周圏分布を見せている。次に古いのはダラ類(ダラズなどを含む)で富山・石川と鳥取・島根東部(出雲地方)の二領域に集中している。

以下、この番組で推定された、京都で生まれて周囲に広がっていった語形の順序は以下の通りである。
ダラ類(長野の一部と兵庫南部ほか)→タワケ類(愛知・岐阜・長野南部付近と山口など)→コケ類(関東北部と愛媛の一部)→ボケ類(関東の一部と近畿・中国・四国に散在)→ウトイ類(長野の一部と近畿南部)→アンゴー類(佐渡島と岡山など)→アヤカリ類(福井の越前地方と長崎の一部ほか)→ヌクイ類(福井の越前地方と兵庫・広島の一部)ハンカクサイ類(東北北部・北海道と石川の能登地方)

「はんかくさい」は北海道弁を代表する語として有名であるが、これは東北北部の方言が移住によって北海道にももたらされ、北海道全域に広がったものと考えられる。ただしハンカクサイは分布図による限り、近畿以西には見られず「日本方言大辞典」(小学館)にも東日本の用例しか載っていないので、この語が京都(中央)で使われたことがあるかどうかは、今後の検討が必要であろう。(ただし、後述する松本修氏の著書には、奈良県で「面倒くさい」と言う意味でハンカクサイを使うと言う情報が記載されている)。

奄美・沖縄全域に見られるフリムンも、この番組では(京都における)最も古い語と推定しているが、地図を見る限り本土には皆無なので、これについても疑問がある。
なおフリムンの語源は「ほれもの」であると考えられる。沖縄では本土におけるオ段の音はウ段に、エ段の音はイ段に変化しているから、horemono(ほれもの)→hurimun(フリムン)と言う変化が想定されるわけである。「ほれる」とは、夢中になって頭がぼーっとなる(ばかになる)ことである。

以上のほか、一地方のみに見られる語して、茨城のゴジャッペ、福島のオンツァなどがある。茨城の人にゴジャッペの意味を聞いてみると、「ばかもの」のほか、「でたらめ」「うそつき」「むちゃ」など、人によって説明がまちまちである。そもそも性格や感情を表す言葉は共通語であれ、方言であれ、その意味するところを正確に把握することは難しい。
テレビ朝日が収集した多様な語形の意味も、アホやバカの意味とは微妙にずれている可能性がある事は注意すべきであろう。

この番組は、テレビ朝日のディレクター(当時)の松本修氏の企画によるものであるが、その後松本氏は、全国に分布しているアホバカ方言がいつの時代の中央(京都・江戸)文献に現れるかも精査して『全国アホバカ分布考-はるかなる言葉の旅路』(太田出版)と言う名著を刊行した。

これを見て教えられたこと感じたことなどを書き留めることにする。

① 長年私は「あほ」は「阿呆」と書き、正しくは(アホウ)と読むものとばかり思っていた。また「バカ」は(馬鹿)で、これも日本で作った言葉と考えていた。そこで改めて藤堂先生の「漢字源」を開いてみたら、そこには次のように記載されていた。

【阿呆】一、アタイ(俗)まぬけ。▽中国の江南地方の俗語。二、アホ(国)おろか者。ばか。

なお「阿」には「親しみの気持ちを表して、阿兄、阿母、のように使われたもの」という説明が付いている。

また、「呆」の古字は赤子の下半身をおしめで包んだ形を描いたもので、保護の「保」の原字。そこから子どものようにぼんやりした様を呆然といい、日本では呆(あき)れると使われると説明している。
これらを見ると「阿呆」は多少親しみを込めた「おバカさん」というとことではないかと思われる。

【馬鹿】(国)愚かなこと。おろか者。

これを見ると、「馬鹿」は日本語のバカの当て字として作られたものと考えられるが、広辞苑のばか【馬鹿・莫迦】では、「(梵語moha慕何)、すなわり無知の意味からか。古くは僧侶の隠語。馬鹿は当て字。おろかな事。社会常識に欠けること」と説明している。

以上からすると、アホもバカも中国の文献に無縁と言う訳ではないようで、中国に留学した高僧が持ち帰った古典からとられたと言うのではないかと思われる。

② 「あほう」と「ばか」を意味する方言が、こんなに沢山あるとは知らなかった。この中でタワケ、コケ、ボケ、トロイ、フーケモンは正確とは言いがたいが馴染みがある。そこで広辞苑を開いて確かめると次のようになっていた。

たわけ【戯け】①みだらな通婚。②ふざけること。おどけ。たわむれ。③たわけもの。ばかもの。
こけ【虚仮】①内心と外相とが違うこと。真実ではないこと。 ②思慮の浅薄な事。おろかなこと。③けなして言う。こけにする。
ぼけ【惚け・呆け】①ぼけること。②漫才で間の抜けた事を言って笑わせる役の者→つっこみ。
ぼける【惚ける・呆ける】①頭の働きや感覚などが鈍くなる。ぼんやりする。もうろくする。
ぼける【暈ける】色が薄れてはっきりしなくなる。色がさめる。また、物の輪郭がぼやける。
とろい<形>①にぶい。愚かだ。間が抜けている。②火などの勢いが弱い。

なお、フーケモンは広辞苑にはなかったが、私のおぼろげな記憶では福岡出身のタレント小松政夫が使っていたような気がするがどうだろう。

また「はんかくさい」は、北海道生まれの亡父が使っていたのを約七十年ぶりに思い出した。これも広辞苑で見ると次のように解説されていた。

はんか【半可】①未熟。中途半端。生半可(なまはんか)②半可通の略。
はんかくさい【半可臭い】(北海道・東北で)ばからしい。あほらしい。
はんかつう【半可通】通人ぶること。よく知らないのに知っているように振る舞うこと。

幼少期、父からしばしば「はんかくさい」と言われていた私は、つまらぬ事ばかりしていたに違いない。

(平成二十七年十二月二十一日)

2016年3月31日

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