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「古賀悦之君を巡る不思議な縁」

昨日、長男の恒士が次のようなメールを持ってやって来た。

「二人の秀才」
貴方のサイトで上記のタイトルの文章を拝読しました。小生(緒方正嗣)は、緒方美津子(旧姓古賀)の夫です。妻は上記の文章に登場する「古賀悦之」の妹ですが、悦之が養子なので、正確には従妹です。

悦之の長男、古賀龍威智郎が、あなたのサイトで上記文章を発見して、一読を勧めてきました。大変精緻な文章で、早世した悦之の麻生に就職するまでの経緯は肉親も知らなかったことが詳述されていて、感動して読ませて頂きました。

そこでお願いですが、もし、佐藤信良様がご存命で連絡可能ならば、住所、電話番号等の連絡先を教えて頂けませんでしょうか。

「返事のメールをしていますので、電話がかかって来るかも知れません」と恒士は言い残して帰って行った。
二十二年も前に他界した古賀悦之君の名前を目にし、懐かしさと共に、彼との不思議な因縁に感慨ひとしおのものがあった。

そして今日、その緒方雅嗣夫妻から電話があった。
古賀悦之君の事はさることながら、彼の明善高校での恩師松本ベンちゃん先生や、松本先生の甥にあたる木庭暢平先輩や、古賀君夫妻が生前色々とお世話になった野見山芳久君のことにまで話が及び、タイムトンネルを潜って半世紀余りもの昔に帰った想いを楽しませてもらった。と同時に人間社会の不思議な縁を改めて痛感させられた。

古賀君の事は、私の人生でも、とりわけ忘れられぬ事柄で、ある意味では私の生涯の記念碑でもある。
古賀君については、この「二人の秀才」とは別に「典太専務を偲ぶ」と題する思い出話の中でも書いたことがある。そこで改めて古賀君だけに的を絞って記す事とする。


 

古賀悦之君について

私は昭和三十二年十一月、麻生本社の労務課課長代理から文書課課長代理へ転勤した。
日本は昭和二十六年九月サンフランシスコ条約で米軍占領下の地位から独立を回復し、後に世界的奇跡と言われる高度成長へスタートしようかと言う時代であった。

石炭産業こそ、エネルギー革命による斜陽化にさしかかっていたものの、経済界はいずれの企業も増産・拡大に沸き立つ時代で、わが社のような石炭会社では優秀な技術系大卒社員の募集が次第に難しくなってきた。ことにセメント工場の将来を託する応用科学や電気工学、機械工学の大卒技術者を確保することは、極端に困難な状態となってきた。

そこで私は、優秀な学生に学資を支給することで技術系大学生を育成し、人材確保をするより他に方法は無いと考え、課長の同意を得て、早速最寄りの高校訪問して、然るべき生徒の推薦を依頼することとした。

そうした一連の学校訪問で、久留米の明善高校で松本先生にお会いした。松本先生は後に聞き知ったところでは「ベンちゃん」と言うニックネームで多くの生徒から慕われている先生と言うことであったが、初対面の私は、一見飄々とした仙人のような風格に見受けられたことであった。
その松本先生に当方の来意を述べ、
「この春大学入試に合格した生徒で、推薦頂けるような該当者はいないでしょうか」と尋ねた。
すると先生は
「今年の卒業生にはいません。しかし、今の二年生にはぜひ推薦したい生徒がいます。御社が給費を約束されるなら、その子に来春大学を受験させましょう」
と言われる。

だが来年のことで果たして大学入試に合格するか、その時になってみなければ、わからぬことではないかと私は内心思ったが、せっかくここまで足を運んで、松本先生との面識ができたのだから、この縁を切っては損だと考え、
「来年、その生徒がわが社の希望する大学に合格できたら、そうさせてもらいましょう」と返事した。
先生はさらに
「大学はどこ受けさせましょうか」
と言う。その言い方は、どんな大学でも合格は当然といった感じに受け取られたので、私も意地悪く
「それでは東大工学部を受験させて下さい」と答える。
すると先生はいとも簡単に
「承知しました。早速本人に伝えることにします。両親に死に別れて、叔母の厄介になっているので、進学は諦めているようですが、御社のことを話せばきっと喜ぶでしょう」
と、もうその子の東大合格も、給費生採用も決まったような口ぶりである。

来年の事ではあるし、今まで受験勉強もしていなかった者が、現役で東大合格など、とても無理だろうと私はあてにする気はなく、儀礼的に
「それではよろしく」と挨拶して辞去した。

一年経った翌年三月、すっかり忘れていた松本先生から電話がかかってきた。
「去年お話しした子が東大工学部に合格しました。そちらにご挨拶に連れて行こうと思っていますが、何時がいいでしょう」と言う。
突然の電話でびっくりしたが、それよりも、いとも簡単に難関と言われる東大工学部に合格した生徒と言うのは、どんな子だろう。頭は素晴らしく良いには違いないが、人柄はどうなんだろう。将来わが社の社員とするのに不都合は無いのだろうか、私は一度にいろいろなことが心配になってきた。

こんなことなら昨年この話が出たとき、人物や家庭環境など、もう少し詳しく調べておくべきだったと、自分の手抜かりが悔やまれた。しかし、今更ちょっと待ってくれとは言われない。仕方がないので、来社の日時を打ち合わせて、電話を切った。

約束の日に、松本先生はまだ童顔の抜けきらない小柄な生徒を連れてきた。古賀悦之君と言うその生徒は、いかにも頭の良さそうな顔立ちであったが、性格も素直そうな好青年というのが第一印象で、私の不安はたちまち解消した。

給費生採用の手続きが済んだ後、師弟ともども大浦荘に案内し、昼食をしながら歓談した。その席で松本先生は、古賀君に向かい「本日、君を麻生産業へお渡ししたので、これからは一切会社の指示に従って行動するように」
と諭され、次に敷いていた座布団を外して畳に両手をつき、原田課長と私に向かって
「古賀君の事は今後一切お任せいたします。なにぶんともよろしくお願いします」
と深々と頭を下げられたことであった。

麻生太賀吉社長はどんな鍛錬をされておられたか知らないが、まだ冷房のない当時、真夏でも上着を脱がれているお姿は拝見したことがない。ところが弟の典太専務は対照的に身形(みなり))など構わない極めて庶民的なお人柄であった。

戦時中は陸軍技術大尉として小倉造兵所に勤務され、小倉市内の民家に同僚の将校と一緒に下宿されていた。
あまり身形を構わないので、下宿の小母さんが、同僚の将校に「麻生大尉さんは、麻生財閥の御曹司と言う事だそうですが、お妾さんの子供では・・・」と噂したらしい。その将校が「少しは身形をかまわないと妾の子されるぞ」と専務に忠告したとの事。その話を私の勤務する文書課に来られて面白おかしく話されていた。

文書課は会社の受発信書類の事務も行っていたが、ある日、典太専務宛の封書があるところに専務が入ってこられた。そこでお手紙が来ていますよとお渡しした。
専務は差出人の名前を見て小首を傾げておられたが、中を読まれて
「いやー!、珍しい人から便りが来た。いつか話した、俺を妾の子にした小倉の小母さんだ。ところで佐藤君、今度、古賀何という子を給費生に採用したのかね」と聞かれる。
「はい、採用しましたが、何かございましたか」
「その子は、この小母さんの甥で、今度麻生のお世話になることになりましたのでよろしくとのことだ」
と言われる。その時、私は不思議なこともあるものだと思った。

古賀君は在職中、別段典太専務と関わる事はなかったが、平成四年の年末、典太専務が他界されると、後を追うように翌年正月四日、古賀君は蜘蛛膜下出血で急逝した。私は人の世の不思議な縁を思わずにはいられなかった。

平成十年、隠居の徒然(つれずれ)に麻生本社文書課勤務時代の思い出話を記し、先輩の木庭暢平さんに差し上げた。すると木庭さんから「文書課勤務よもやま話」に登場する明善高校の松本ベンちゃん先生と言うのは、俺の叔父だ」と言われた。

私は初めて耳にしたことでびっくりしたが、思えば、松本先生はそのことを一度も口にされなかった。公私の別に厳しいそのお人柄には、改めて感じ入ったことである。

古賀君は、東大工学部応用化学科を経て東大大学院の修士課程卒業後、麻生に入社した。その後まもなく私は社外に出向し首都圏に在住することになり、古賀君が麻生でどんな活躍をしたかは知らない。

しかし晩年飯塚に引き上げてきて耳にしたところでは、彼は麻生泰社長の信頼を一身に受け、会社を牽引しているとのことで、私は彼を掘り出してきたことを心密かに自分の誇りと思ったことである。
そんなことで、古賀君にはまだまだ大いに活躍してもらいたいと思っていたが才子薄命と言うのであろうか、現役活躍中に突然死してしまった。

飯塚の葬祭場善光会館で行われた葬儀に参列した私は、次々に捧げられる参列者の焼香の煙の中で、わが子を亡くしたときのような悲しみと虚脱感に包まれていた。

(平成二十七年八月三十日)

2016年1月25日

所長の佐藤です。

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