トリガーポイントとは?腰痛・肩こり・関節痛などの痛みの原因です。

トリガーポイント研究所

4-5 肩こり

腰痛と共に悩んでいる方が多い症状が「肩こり」です。「外国の方には肩こりが無い・・・」という話を聞いた事がありますが、海外の映画やドラマで肩を揉んでもらって気持ちよさそうにしているシーンを幾度か見たことがありますので、どうやら我が国だけの悩みでもなさそうです。

肩こりも全身的な問題

肩が凝るから肩を揉んでもらったり、湿布を貼る・・・という方が多いと思いますが、「痛み」や「コリ」は全身の問題として捉えなければなりません。もちろん肩こりもそうです。

私が指導していますトリガーポイント・エクササイズ教室で、90分ほどのエクササイズが終わった時に、「下半身がほぐれると肩がすっかり楽になるんですね~!今日は肩が凝ってたまらなかったのに、下半身のエクササイズをした時に、す~っと肩が軽くなるのを感じました」という話をよく聞きます。全身は筋膜でつながっていますし、身体はどこか一部に不具合が生じた時に、全体として対応しようとしますので、下半身の緊張が肩まで緊張させることは当然のことと言えます。

ケネディ大統領の主治医だったトラベル女史が書かれた「トリガーポイント・マニュアル」には、トリガーポイントが起こす主な症状が図で紹介されていますが、もっとも遠隔地まで痛みを感じさせるのは、下図の「ヒラメ筋」に生じたトリガーポイントで、原因はヒラメ筋にあるのに、痛みは頬で感じます。この事からも、『肩が凝るから肩の治療』だけでは改善しないことがお分かりだと思います。

『治療院へ行って肩をほぐしてもらっている時は気持ちいいけど、ほぐしてもらって、自宅に帰り着く頃にはもう肩が凝っている 』 ・・・という経験をお持ちの方は多いと思います。

 肩こりは呼吸との関連性が重要

肩こりの治療で重要なのは、呼吸との関係です。 短距離走をした後に肩で息をするのは、胸郭や腹部の拡がりだけでは酸素が足りないために、肩を持ち上げてさらに息を吸おうとするためです。通常は走った後のように、大量に酸素を必要とする時だけに起きますが、腹部の筋や胸郭の拡がりに関与する筋に緊張・短縮が生じますと、腹部や胸郭が拡がらず、首や肩の呼吸補助筋を使って呼吸をするようになります。

首や肩の筋を過剰に使った呼吸が日常的になりますと、当然に肩こりになって行きます。

『Wikipedia:呼吸筋より』

呼吸筋(こきゅうきん, 英語: Muscles of respiration)は、呼吸を行う筋肉の総称。すなわち、呼吸をするときに胸郭の拡大、収縮を行う筋肉のこと。種類としては、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋などがある。

このように呼吸に関わっている筋は数多くあり、この他にも胸の側面にあります前鋸筋も呼吸と深い関係にあります。前鋸筋が緊張しますと、胸郭の動きが制限され、深い呼吸ができなくなります。その為前鋸筋が硬くなった患者さんは「空気が足りない」とか「息苦しい」などの症状を訴えます。

また、前鋸筋は肩胛骨に付着しているため、この筋の緊張は肩胛骨を引っ張り、いわゆる「天使の羽」状態になります。肩胛骨が飛び出している方は前鋸筋の緊張の可能性があります。

前鋸筋が弛みますと、深い呼吸が楽にできるようになり、肩や首だけでなく、全身がスッキリした感じになります。

肩こり治療で重要なトリガーポイント

肩甲挙筋

肩こり治療で重要なトリガーポイントは肩甲挙筋にあります。肩甲挙筋は肩周辺ではトリガーポイントの出現率が最も高く、肩や首のコリを感じている方では、例外なくと言って良いほどトリガーポイントが見つかります。出現頻度が高いと言うことは、それだけ他の部位への影響も大きいと言えますので、このトリガーポイントの治療は優先されます。

僧帽筋

肩こりの筋といえばこの僧帽筋で、皆さんが手で揉んだり、湿布を貼ったりするところです。この筋も過緊張になりやすく、トリガーポイントの出現頻度も高い筋ですので、肩を揉んでもらうと痛くて気持ちいいのですが、実は、皆さんがコリを感じている所にあるトリガーポイントは、下図①のように、首の側面や側頭部に痛みを放散するトリガーポイントで、肩のどうしようもないコリや痛みの原因ではないのです。

肩の上部に痛みやコリを感じさせているトリガーポイントは、下図②のように、肩胛骨の内側にあるのです。ちょうど皆さんが気になる場所だと思います。従って、肩上部のコリや痛みを軽減するには、肩胛骨内側のトリガーポイントを治療しなければスッキリしないと言うことです。

                       

心理的要因も見逃せない

 身体の動きは心理の発現ですから、不安が高じたり緊張するような状況下では、身体に力が入ります。特に腕、肩、顔、臀部などは緊張が高まりやすい部位です。緊張を強いられる職場(危険性のある作業、時間に追われる業務、合わない上司との仕事)で長時間働く方はどうしても肩や首を緊張させたままになりがちです。 時々伸びをしたり、深呼吸をするなどすればかなり緩和されますので、日常のエクササイズとして取り入れて下さい。

上腕が短い人は肩こりになりやすく治りにくい

立った状態で、肘が骨盤に付かない人は、体幹に比べて上腕が短いという構造的な問題があります。このような方は既製服を購入されると、どうしても袖が長くて調整する事が度々あるという経験をされていると思います。

上腕が短いため肘掛け椅子の肘掛けに届きにくく、上体が傾きがちになりますし、パソコン作業などをする時に椅子の高さを調整しないと、肘が浮いた状態になるために、肩の筋で腕を支える事になり肩こりになりやすく治りにくくなります。

「上腕が短い」という以外の身体の構造的な問題で、痛みやコリが治りにくくなります。詳しくは下記の項を参照下さい。

 6-2 治りにくく再発しやすい要因

 ※ 【イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用 】 

コンテンツ作成・責任者:佐藤恒士(さとうつねし)


整体治療歴約25年。自力整体法、長谷川淳史先生のTMSメソッド、石川県小松市の整形外科医、加茂淳先生からトリガーポイント療法等を学び、現在は、トリガーポイント理論を多くの方に広める為にトリガーポイント研究所を設立し筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の啓蒙活動と後進の育成に力を注いでいます。詳細はこちらを参照ください。