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第五話「はぜまけ」

晩秋の佐賀平野を行くと、そこここの川の土手など真っ赤に紅葉した櫨(はぜ)の木が実に美しい。関東地方では見かけないが、九州ではこの櫨の木がいたるところで見られる。この木は漆科に属し、昔はその果実から蝋燭を作ったという。だから紅葉はまことに美しいが、その樹液や果実はもちろん皮膚の弱い者は、葉に触れただけで皮膚炎、俗にいう「はぜまけ」になる。私のような虚弱体質のものは特にひどくやられる。
頑丈な子どもの中には櫨の実をちぎり、投げつけ合って遊んでも、ちっともかぶれない子もいたが、わが家では兄も私も今で言うアレルギー体質というのであろうか、雨の日に櫨の木の下を、傘をさして通っただけでも忽ちかぶれるという有様であった。

櫨にかぶれると漆まけと同じで、まずその部分が無性に痒くなる。ごしごし掻くとやがて赤く腫れ上がり、目を打たれたボクサーのように前も見えない程になる。しかも少しの絶え間もなく痒さが身体中をかけめぐる。その不快さ加減と言ったらこの上もない。
はぜまけの治療にはどくだみ(一名入道草ともいう)が効くと言うので、あの臭い入道草を擂り鉢ですりつぶし、青く臭いその汁を患部に塗布したものであるが、その臭いといい、うっとうしさといい、何とも言えぬ嫌な感じである。五十年たった今、こうして記していても、なんだかそこら中が痒くなって来るような気がする。
 

また、一説には油揚げが良いと言い、買ってきた油揚げで患部を撫で回しその油を塗りつける。さらにその撫で回した油揚げを食べると即効があるという説もあったが、さすがにその油揚げを食べた事はない。
いずれにしても痒いからといって、掻けば炎症がさらに悪化するので、ただじっと我慢するしかない、目が覚めているときは本を読んで気を紛らしたりできるが、眠っている間は無意識のうちに掻いてしまう。そこで母が両手を布で包んで、掻けないようにしてくれたものであった。
はぜまけした時は痒み地獄に落ち込んだようなもので、完治するには、一週間はじっと我慢の子を続けなければならなかった。このような辛い思いをするので、常日頃、櫨の木には十分気をつけていた。しかし家の周りや学校の周辺の藪の中には、そこここに櫨の木があり、葉の青い間はそれほど目だたないので、何度もやられて苦しい思いをしたものである。
 

櫨の木のないこの辺り(横浜市)の山を歩いていても、時折まわりに櫨の木が無いかと見回したりする癖が今に直らない。ことにどくだみの臭いがする藪の中に入ったりすると、条件反射というのであろうか、手足がむず痒くなってくるような気がしてならない。(昭和五十三年)

⇒第六話「支那手品」