トリガーポイント研究所
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「五、内務班」

入隊した当日、私は第二中隊に配属された。その兵舎は営内の北側にあり、濠を挟んだ向こうには、市内電車が走っていた。街を行き交う人の姿も見られたが、昨日までと変わらぬ世界があることに、異様な感じがしたことであった。
入隊した当日は、先輩の古年兵が食事の分配や食器洗いなどをしてくれて、われわれ新兵はお客様扱いであったが、明日からはどんな扱いを受けるのだろうと思うと、折角の赤飯も喉を通りかねる思いであった。
三千人ばかりの新兵の中には、私のような身体虚弱なものが相当数いたのだろう、入隊後、日ならずして編制替えが行われて、そういう弱兵は第九中隊に集められた。
九中隊は保健中隊と呼ばれていたが、夕食時には豆乳がつく以外は、他の一般中隊と何ら変わることは無かった。
居室となる内務班は、中廊下の両側にある銃架で四つのブロックに区分されていたが、一ブロックに、スチールパイプの寝台が八つばかり置かれていたように思う。だから、一内務班の定員は三十名ぐらいであったが、間もなく寝台は撤去され、そこに板張りの高床が作られて、その上に藁布団が敷き並べられた。
金属の回収が目的だったのかも知れないが、つぎつぎに召集されてくる兵隊の増加に対応するためでもあったのだろう。一内務班に多い時は七十名以上も収容されていることもあった。そのような時は、仰向けに寝ることはおろか、夜半にトイレに立ったりすると、再び自分の寝場所を確保するのに苦労した。
内務班の四つのブロックの、それぞれ両端は上等兵や古参の一等兵が占拠し、その間に新兵が配置された。
端から二番目、すなわち古兵の隣に配置された新兵はその古兵の下着を洗ったり、軍靴の手入れをしたりといった雑事をさせられるのがならわしである。古兵達は初年兵の中から気のきいた者を選んで、自分の隣に配置して、世話をさせていたが同時に何かと便宜を図ってやってもいたようだ。それは相撲社会の関取と付き人との関係と言ったらよいかも知れない。
私自身は生来ドジでもあり、可愛気もなかったから、古参兵の付き人をさせられることはなかった。自分の事だけで精一杯の私にしてみれば、それはありがたい事であった。反面、初年兵全員が連帯責任を問われて、体罰を受けるようなとき、その空気をいち早く察した古兵が、自分の私用にかこつけて、付き人をその場からはずしてくれるというような恩典に浴することもなかった。
内務班におけるゴマスリとヒイキの構造は、いつから根付いたものだろう。しかし御恩と奉公は鎌倉武士の行動原理だった事を思えば、人間社会には付きもので、ことさら驚くことではないのかも知れない。
しかし、演習が終わって解散した途端、班長や古参兵のまわりに、バッタが群がるように初年兵が飛びついて、脚絆をとってやったり、軍靴の紐をほどいてやったりする風景にはどうもなじめなかった。お陰で横着な新兵と見られて、他の者より余分に殴られたことも幾たびかあった。

(注)銃架(ジュウカ)=小銃などを立てかけて置く台。
(注)内務班=旧陸軍の兵営内における日常生活の単位。中隊が五~六の内務班に分かれ、下士官が班長として統率した

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2015年6月23日

所長の佐藤です。

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