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十月二十六日 「聞く力」

生まれたばかりの赤ん坊は、ただ泣くことでしか意思表示ができない。しかし毎日母親が授乳させながら「お利口ね」とか「丈夫な子になってね」とか話しかけることで、いつしか言葉を覚え、やがては自ら言葉を使うようになる。

赤子に対する母親の話しかけは、独言(ひとりごと)のように見えるが、子供の言語発達には、最初で最も大事な教育である。

この中で子どもは、豊富な語彙(ゴイ)の使い方と物事の理解力を身に付ける。人間の知能の発達は、聞くことにあると言っても過言ではない。

外山滋比古氏が、その著書の中で、次のように述べられている。

世の中で、有名校とか名門校のことをねたみ半分にいろいろ悪く言うが、私は、世評の高い学校は、やはりそれだけのことはあると、話の聞き方からはっきり言えると思うようになった。ことに話に敏感に反応するのは高校生諸君ではなかろうか。こちらが一生懸命に話すと、かなり程度の高い、あるいは、すこし無理な話をしても、食い入るように聞いてくれる。

天下に聞こえた地方の名門高校なら、千名以上の生徒が二時間くらい私語ひとつしないで話を聞く、という安心感がある。ところが、いわゆる二流、三流校になると、そうはいかない。同じような話をしてもだめだから、よく準備をして壇上に立つのだが、三十分を越すと、話についてゆけない生徒が動揺を始める。知的な話についてゆけないから、せっかくの勉強も身につかないので、話が聞けないのは能力が足りないからではなく、話がうまく聞けないために、学力を伸ばしきれないでいるのだろう。

最近は、女性の社会進出を安倍政権も奨励しているようだし、経済的理由もあってか、産後、日ならずして乳児を託児所に預ける女性もあるとか。大都会では託児所不足で、無認可の託児所も少なくないと言う。こんな環境では乳幼児の成長もさることながら、十分な知的発育も期待できない。

また、私のような老骨には操作も出来ないスマホなるものが庶民生活の中に氾濫し、友人同士の会話も減少していると聞く。

日本語では、人一人にも、他の動物と区別して「人間」と言う言葉を使う。「人間」とは、複数存在して初めて成り立つ言葉である。と言うことは、人間は他の人間とのコミュニケーションがあって、初めて人格ある人間と認められるわけである。

一日中スマホを手にしている若者は、「ホモ・サピエンス」ならぬ「ホモースマートフォン」とでも言うべきではないか。

2016年12月17日

所長の佐藤です。

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