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十月十二日 「知的障害者について考える」

今朝の毎日新聞には、論説室の野沢和弘氏が「真の被害者は誰なのか」と題して、先頃の相模原殺傷事件を取り上げ、次のような論説を掲げている。

どうにも腑に落ちない。いったい真の被害者は誰なのだろうか。
相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で重度の障害者十九人が殺害され、二七人が負傷した事件からニヵ月あまりが過ぎた。神奈川県は保護者と施設の要望を受けて施設の建て替えをするという。神奈川県警は「知的障害者の支援設備であり遺族のプライバシーの保護等の必要性が高い」と被害者を匿名で発表した。マスコミの報道も差別や偏見に苦しむ保護者に同情的なものが多い。

しかし、上松聖容疑者は「通り魔」ではない。事件の五ヵ月前まで「やまゆり園」で働いてた元職員である。
勤務中には障害者に対する虐待行為や暴言もあった。なぜこんな人物を雇ったのか、どうして指導や改善ができなかったのか、なぜ犯行予告をされながら守れなかったのか・・・。被害者の家族がそう思ったとしても不思議ではない。もしも保育所で同じ事件が起きたら、施設は管理責任を追及されるはずだ。なぜ知的障害者施設ではそうならないのか。

それは、親たちが望んで、あるいはやむにやまれずにわが子を「やまゆり園」に預けているからだろう。親は冷たい視線にさらされながら、何もかも背負って生きなければならなかった。私自身も重度の自閉症の子の親である。あわれみや、やっかいものを見るような視線を容赦なく浴びてきた。ストレスで心身を病んで仕事を失い家族が崩壊するのを嫌というほど見てきた。そんな親たちを救ってくれたのが入所施設だった。

しかし、入所施設では自由やプライバシーが制限された集団生活を強いられる。「どうしてこんな山奥の施設に閉じ込められなければいけないのですか」「僕はお父さんにだまされて連れてこられた」。一九九七年に白河育成園(福島県)という入所施設で虐待事件が発覚したとき、被害にあった障害者たちからそう言われた。

「やまゆり園」の障害者はそんなことは言わないだろう。それは「やまゆり園」が良い施設だからか、障害が重くて話すことができないからなのか。楽しそうな顔をしているように見えても、それは他の選択肢を知らないからではないのか。ハプニングに富んだ自由な地域社会では、さまざまな人との出会いや心の交流がある。挑戦や冒険をして感動したり、悔し涙を流したりすることもある。そうした体験をした上で、それでも彼らは入所施設を選ぶだろうか。

親も同じだと思う。わが子のためにと思っていろんなことをやるが、わが子のためではなく、親が自分の安心感を手に入れたくてやっていることが多い。自分を振り返っていつもそう思う。孤独と疎外感に苦しんだ経験をすると、わが子を預かってくれる相手が神様みたいに見える瞬間がある。認めたくはないが、親の安心と子の幸せは時に背中合わせになることがある。

「保護者の疲れ切った表情」を見て容疑者は「障害者は不幸を作ることしかできない」と考え「安楽死させる」という考えに至る。あきれた倒錯ぶりだが、保護者への同情が着想の根幹の一つには違いない。県警が被害者を匿名発表した理由も保護者への配慮である。マスコミの報道も保護者への共感である。

しかし、被害にあったのは保護者ではない。障害のある子の存在を社会的に覆い隠すことが、本質的な保護者の救済になるとも思えない。保護者に同情するのであれば、そのベクトルは差別や偏見をなくし、保護者の負担を軽減し、障害のある子に幸せな地域生活を実現していくことへ向けなければならない。

神奈川県は施設の建て替えを決める前に、障害者本人の意向を確かめるべきではないか。言葉を解せなくても、時間をかけてさまざまな場面を経験し、気持ちを共有していくと、言葉意外の表現手段で思いが伝わってきたりするものだ。容易ではないが、障害者本人の意思決定支援にこそ福祉職の専門性を発揮しなくてどうするのだと思う。

横浜市には医療ケアの必要な最重度の障害者が家庭的なグループホームで暮らしている社会福祉法人「訪問の家」がある。どんな重い障害者も住み慣れた地域で暮らせることを実証した先駆的な取り組みから学んではどうだろう。

障害者福祉の現場は着実に変わっているのに、〈障害者=不幸〉というステレオタイプの磁場の中に彼らを封じ込めようとしているように思えてならない。
真の被害者が 何も言わないから、許されているだけだ。

これを読んで、学んだこと、感じたこと、疑問になったことなど思いつくままに、書き留める。

① 植松容疑者の殺人行為は、如何なる理由があっても許されることのない犯罪行為である。その被害者は殺傷された障害者である。

② 前科のある植松容疑者をなぜ「やまゆり園」が一度は採用したか、植松容疑者の予告に対する処置はされなかったのか等々筆者と同じ疑問があるが、どうなっているのだろう。それらに関する報道も無いようだが、どうしてか。これも保護者たちの「そっとしておいてほしい」という要望があってのことか。

③ 筆者はタイトルにあるように「真の被害者は誰なのか」と被害者捜しをしているように思われるが、実は心身障害者の社会的処遇改善を求めているようだ。

④ 重度自閉症の子を持つ筆者は、障害者の家族の事情や、その心理的葛藤、障害者施設の現状にも通じておられるようであるが、私は全く知らない世界のことで、教えられることが多いが、同時に筆者は子育てと職業と両立させておられるようで、そのご労苦にはただただ敬服の他はない。

⑤ 筆者は一般通常人と障害者との区別を無くすことを理想としているようだが、その実現は容易なことではないと思われる。

⑥ 筆者はわれわれ素人の啓蒙のために、横浜市の「訪問の家」などを紹介しているが、まだ実例が少ないのか、全国各地の人々が簡単に見学できる程ではないようだ。

⑦ 凡俗の私は、筆者の理想とする社会の実現には、どれ程のコストがかかるか、何人の介護士を必要とするかなどを考えてしまう。それは莫大な数字で、とても実現可能なものではないと推測されるが、果たしてどうなんだろう。

⑧ 前にも書いたが(「相模原事件について」)、私は重度障害者を家族に持つ人との交際では、その事実を知らない素振りで居ることに心がけているが、それでも冷たい視線と受け取られるのでは、どうしたら良いのだろう。

⑨ 重度心身障害者の問題の解決には、超え難いハードルが多く、その解決は極めて難しいのではないか。凡俗の私には、答えは見つかりそうもない。重度障害者を根絶し、この問題から解放されるには、医学の進歩により胎児治療が可能になるのを待つしかないと思うのは、無責任窮まりないことだろうか。諸賢のご判断を仰ぎたいと思っている。

2016年10月28日

所長の佐藤です。

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