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「花が散りよる」と「花が散っとる」

今日も「滅びゆく日本の方言」を見ていると、かつて深町純亮さんが、筑豊弁の長所と力説していた進行態と完了態の区別が取り上げられていた。当時の身振り手振りを交えての彼の姿が目に浮かび、懐かしさに読み耽ってしまった。深町さんにもお目通し頂くべく、転記する。

共通語では花が散りつつあるとき(まだ空中に浮かんでいる時)も、散り終わって地面に落ちている時も「花が散っている(散ってる)」と表現する。しかし、西日本各地(中国・四国・九州の大部分など)では、両者を明確に区別し、「散りつつある時」は「散リヨル」で、散り終わっているときは「散ットル(散ッチョル)」のように区別する。

同様に、金魚が死につつあるとき(死にそうになっている時)は「死ニヨル」で、死んで浮かんでいるときには「死ンドル(死ンジョル)」と言う。

「ろうそくの火が消エヨル」と言えば火はまだ消えておらず、消えそうになっている状態である。「消エトル(消エチョル)」と言えば消えてしまっている。

西日本では、花が空中に浮かんでいる時だけではなく、また枝についていて、今にも落ちそうになっている時も「散リヨル」と言う場合がある。崖から子供が落ちそうになっている場合は「危ない!落チヨルゾ!」と注意する。

このように西日本の「~ヨル」は、「~しつつある」と言う状態と「~しそうになっている」という状態を表す。文法用語では、前者を「進行態または継続態(進行相・継続相)」といい、後者を「将然態(将然相)」と呼ぶ「~トル」は動作が完了したことを表し、「完了態または結果態(完了相・結果相)」と呼ぶ。

「ヨル」と「トル」の区別がある地域では、「運動会をしている」ことを「運動会がアリヨル」と表現する場合が多い。

なお近畿・北陸地方の大部分では、花が散りつつある時も、散って地面に落ちている時も「散ットル」と言う。両者を区別しない点は共通語と同じである。関西では「~ヨル」は軽蔑のニュアンスで使われることが多い。「あいつはいつまでも酒を飲ミヨル」のように。

「私は毎日歯を磨いている」のように習慣を表す場合は、中国・四国・九州では「磨キヨル」が多いが、「磨イトル」と言うこともある。青森県では「毎日磨イデラ」と言う。

山形県の大部分では、過去形は共通語と同じ「~タ(ダ)」であり、進行態は「~ッダ」「~デタ」のいずれかが使われる。「昨日海で泳イダ」に対し、目の前で泳いでいるときは(あそこで人が泳イッダ、泳イデダ、泳イデル」のように言う。「昨日泳いでいた」のような過去進行態は「泳イダッケ」のように回想の「ケ」をつけることが多い。

しかし「売る」「飲む」などのように過去形が促音形や撥音形になる動詞では、「昨日酒飲ンダ(酒を飲んだ)」とか、(電話で)「今何シッタ?(今何をしているか)」と聞かれて「酒飲ンダ(酒を飲んでいる)」のように過去形と進行態の区別がなくなることもある。
「売る」の場合は、「去年家売ッタ」「あの店でタバコ売ッタ(売っている)」「昔はあの店でタバコ売ッタッケ(売ってた)」のようになる。

(平成二十七年十二月十五日)

2016年3月21日

所長の佐藤です。

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