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「『暑中見舞い』を考える」

このところ日本各地で猛暑となり熱中症で病院に運ばれる人が少なからずいると、連日伝えられている。私は終日屋内で暮らしているが、正午前の室内温度は三十三度に達している。来客もない隠居の身だから、下着だけで過ごしているのだが、それでも扇風機は手放せない。

無為徒食の暮らしでは、クーラーのスイッチを入れるのは気が引けるが、午後ともなれば、使わせてもらおうかと思っている。

麻生本社に勤務していた昭和三十年代は我が家はもとより、事務室でもクーラーはなく、天井に取り付けられた扇風機が熱い空気をかき回す中で、汗を拭いながら仕事をしていた。本社事務所にクーラーが導入されたのは昭和四十一年入社された麻生太郎さんの指示によってのことだった。

我が家にクーラーを設置したのは昭和五十年、横浜の郊外に初めて我が家を手にしたときである。しかし電気料金節約のため、あまり使用することはなかったと記憶している。その時代はまだ体力もあり、当時の横浜郊外は耐えられぬ猛暑日は少なかったように思う。

今日は満九十三歳の誕生日。これほど長生きすると、かねての交際相手はほとんど冥界へ旅立ち、暑中見舞いの筆を執ることもなくなった。

ところで、 見舞いといえば、病気見舞いや近火見舞いなど、今日では人様の安否を伺いに訪れることに専ら用いられている。しかし広辞苑によると「見舞い」の第一義には見回ること、巡視が挙げられている。これは見ると「みまわる」が「みまう」に転化したようにも思われる。また今日では、被害を受ける意味で「災害に見舞われる」などとも使われている。

「舞う」という言葉からは、日本舞踊などが連想されがちだが、「鳥が空を舞う」などと言うときは「まわる」意味で使われている。

こうして見ると「舞う」の語源は「まわる」にあり、女性が優美に身体をまわす姿を、「まわる」と区別して「舞う」ということになったのではないかと思われるがどうだろう。

しかし最近あまり耳にしなくなかったが、かつては「拳骨をみまう」などとも使われたもので、この場合の「見舞う」は「台風に見舞われる」などと同様に襲撃を意味している。

どうも「見舞う」という言葉は「舞」の字が「舞踊」を強く印象づけるので、「災害に見舞われる」「拳骨を見舞う」などという表現に違和感を感じるのかも知れない。

(平成二十七年七月二十九日)

2016年1月8日

所長の佐藤です。

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