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「戦争と平和」

私が受けた戦前の学校教育では、木口小兵の「死んでもラッパを離しませんでした」や、岸壁に立って老婆がわが子の出征を励ます「一太郎や-い」など、忠君愛国物語は聞かされたが、平和教育などということは耳にしたことがない。
 
ところが終戦を境に平和教育という言葉を耳にするようになった。今日の学校でどのような事が行われているか、門外漢の私にはさっぱり分からない。
 
麻生太郎さんの著書「異論」で、「戦争と平和は一組の反対語として把えられているようだが、戦争の反対は話し合いであり、平和の反対は紛争である」ことを教えられた。
 
どうもわれわれは、戦争は悪、平和は善と無意識のうちに倫理的に把えているようである、しかし戦争が悪なら、戦争したものは裁かれねばならない。確かに太平洋戦争で敗戦国となった日本の指導者は東京裁判で戦争犯罪人の烙印を押されているが、あれは例外で、朝鮮戦争やフォークランド戦争などで戦争裁判が行われたとは聞かない。
 
また、東京裁判も、今日ではあれは勝者の権利の乱用で、公正な裁判とは言いがたいなどという説もあり、そのうちに歴史認識の書き換えが行われるかも知れない。
 
考えてみると、戦争は国際法でも、毒ガスや細菌などの禁止兵器の制限はあるものの、国家間の問題解決法の一つとして認められている。すなわち外交折衝による解決が不可能となったとき、戦争という手段に訴えることは合法的に認められているわけである。
 
しかし、戦後七十年近くも戦争放棄の憲法の下で、世界史上希に見る平和に恵まれて来た日本人は、戦争は悪、平和は善という倫理的観念が定着しているようである。
 
ところが近年躍進著しい中国の海洋進出や北朝鮮の核開発など、日本を取り巻く国際情勢の緊迫化に、もはや平和印の団扇太鼓(うちわだいこ)打ち鳴らし、戦争反対のお題目を唱えても無意味なことに気づかされ、最近ではしきりに安全保障論議がなされるようになってきた。
 
思えば、これまで戦争は悪と信じて、平和の内に惰眠を貪ることができたのは、奇跡とも言うべき僥倖であったが、日本人も遅蒔きながら、国際舞台の荒波の中に漕ぎ出す覚悟をしなければなるまい。
 
(平成二十五年八月一日)
 

2013年12月22日

所長の佐藤です。

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